「nothing much」

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A5版 40 monochrome photos

父のことが好きではなかった
だから父が死んだ時も悲愴的な感情はほとんどなかった
それでも人がこの世界から消えること、居なくなること
存在がなくなってしまうことには、揺さぶられるなにかがあった

人が生まれて死ぬことに意味なんてないと思っている
だけど、死んだことがないのでいまいち確証が持てない
灰になった父に「死んでみてどうだった?」と、心の中で訊いてみた
もちろん返答はない

高校生の頃に、父が使っていたアサヒペンタックスをもらった
僕が写真を撮りはじめるきっかけになったカメラだ
今はもうメーターが動かないけれど、自分で露出を合わせれば使えた
そのカメラにモノクロームのフィルムを入れて写真を撮った
それがこの本に収められている写真だ

死んだ父にもらったカメラで撮った写真
ただそれだけの写真

アサヒペンタックスは今でも僕の机の上に置いてある
おそらくこのカメラで写真を撮ることはもうない